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Co-jin Collection -コジコレ- No.7 々

終了しました

会場:art space co-jin

「Co-jin Collection -コジコレ-」もご好評いただき7回目を開催する運びとなりました。2022年度の「京都とっておきの芸術祭」の出品者の中から、今年は「繰り返すこと」をテーマに6名の作家をセレクトしました。タイトルの「々」は本来漢字の繰り返しを表す記号で、読み方はありません。今回は展覧会のテーマを表す記号として用いています。
繰り返されるモチーフ、反復する動作、その同一性と揺らぎから見える作者たちの豊かな表現の世界をご紹介します。

日程

2023年10月17日(火)–12月24日(日)

※月曜休廊

10:00-18:00

会場

art space co-jin

出展作家

有田禎弘
井川和女
大橋透也
川合洋平
栗田瞭
吉岡沙織

出展作品

有田禎弘 《楽しい森》 2022年 色鉛筆、紙 80×538mm
井川和女 《ネコのパレード》2022年 陶土 サイズ可変
大橋透也 《時刻表》2022年 546×635mm
川合洋平 《ニコニコ動物》2022年 270×380mm
栗田瞭 《事変》2022年 392×541mm
吉岡沙織 《しまださんのまゆげ》2022年 792×1073mm

プロフィール

有田禎弘(ありた・さだひろ)

今から8年ほど前のある日、ふと頭に浮かんだ笑顔のキャラクターを描いた。それを周囲の人たちに見せたところ好評だったので、以降笑顔のキャラクターが登場する作品を繰り返し描いている。キャラクターたちに名前は存在せず、動物のようだったり、無機物のようだったりと描くたびに姿が変わるが、そこにはいつも笑顔が浮かんでいる。
有田が絵を描き始めたのは2002年頃、通所している相楽作業所が発行するカレンダーの原画制作に関わったことがきっかけだ。それから作業所内で開かれる絵画教室に参加するようになり、手本や実物を見ながら描くのは自分には向いていないと気づくと、頭の中に浮かぶ風景を描くようになった。笑顔が登場するようになっても、作品の中には色とりどりの建築や山並みが描かれている。
複雑な色味も特徴だ。輪郭線が決まったら下塗りを施し、全てを塗り終えてからもう一度別の色を塗り重ねる。色鉛筆を使って描かれており、大きな作品になると1枚を仕上げるのに半年ほどかかるそうだ。大変な作業量だが、「下塗りだけではいい絵にならない」と有田は断言する。
人に喜んでもらうことに加え、そして自分が納得できる絵を仕上げることが有田の信条のようだ。

井川和女(いがわ・かずめ)

手のひらに収まるものから、抱えるほどの大きさまである猫の焼き物は、洛西ふれあいの里授産園で井川だけが作れるオリジナル製品だ。猫が好きだから作ったのかと尋ねると、朗らかな声で「違うの」と答えが返ってきた。授産園を利用するようになった2019年頃、職員から猫を作ってみないかと提案されたことがきっかけだという。
陶芸の経験はなかったが、手先が器用な井川はすぐに粘土の扱いにも馴れたようだ。彼女が考えついた頭と胴体を後から組み立てる方法は効率的で、発注があれば1日で5体の猫が出来上がる。
焼き物の猫にはお手本があるわけではなく、実家近くにたくさん住んでいた猫たちの記憶を頼りに作られている。
猫の形には変遷があり、初期に作られたものは体が大きく、四角い輪郭で、うさぎのように長い耳をしている。次第に全体が丸みを帯び、耳も小さく、より猫らしくになっていった。色付けは職員が行うことが多いが、井川が行うこともある。鮮やかなドット柄にしてみたり、頭と胴体で別々の色を配してみたりと、彩りにもこだわりがありそうだ。
井川は猫を繰り返し作る理由はないというが、猫を見た人が喜ぶのが嬉しいとも教えてくれた。

大橋透也(おおはし・とうや)

駅で見慣れた情報も、手書きになると別の魅力が宿るようだ。休日と平日、普通と急行の色の鮮やかさと踊るような数字の配列の美しさを大橋の作品は見せてくれる。
中学生時代に友人たちの似顔絵を描いたことがきっかけで絵を描くようになり、2年生の頃には地図を描き始めた。元の図を忠実に再現することもあれば、好きな色を使って描くこともある。大橋が時刻表や看板を繰り返し描く理由は「楽しい」から。その言葉を裏付けるように、今回の借用にあたり大量の作品を拝見した。
大橋の中でブームがあり、その時々によって繰り返されるモチーフは異なる。地図やマークへの興味は変わらないようだが、ひたすらトイレの案内図を描いている時期があれば、デパートやホテルのエレベーター横にあるフロアガイドばかりの時期もある。時刻表、看板、案内図。どこかで見たことがあるものばかりだが、揺らぎのある線で再現されたそれらは全て新鮮に見える。
2022年からは写真を見ながら描くようになった。仕事であるポスティングの際に立ち寄った場所で気に入った看板や案内図があれば撮影する。
取材で訪問した時も、スマホで写真を見ながら案内図を描いている最中だった。小さな絵であれば30分もかからないうちに完成する。大橋の手の運びに迷いはなく、見る間に完成させる様子はまるで職人のようだった。

川合洋平(かわい・ようへい)

漫画チックな表情を浮かべた動物たちに、もう一歩に近づいて見て欲しい。カラフルな体はパーツ分けされ、波紋のように幾重にも重なった線によって塗られていることに気づくだろう。
動物の輪郭を描くのは早いが、その全ての分割を塗り潰し1枚の絵が完成するまでに約半年がかかっている。今回展示している作品の中にも、まだ輪郭線のみのもの、余白が見えるものがある。新しい作品に取り組み始めても、過去の作品に描き足すこともあり、制作時間はさらに伸びていく可能性がある。
川合は絵について、色塗りが楽しいから描いているという。線を繰り返して輪郭の内側を埋め尽くす塗り方は、自身で考えついたものだ。実物とは異なる配色にも川合なりのルールがあり、それに従って塗り分けられている。
2003年頃から相楽デイセンターで週に1度開かれる絵画教室に参加しているが、継続して描くようになったのは2013年頃からだ。教室の本棚にある図鑑を開き、それぞれのページから好きな動物を選んで描き始める。選考基準はカッコよさだ。
動物を描くこと以外で好きな物は、『名探偵コナン』や『鬼滅の刃』、怖い話のテレビ番組やマイケル・ジャクソンなどだという。刺激的なカッコよさを求めているようだ。

栗田瞭(くりた・りょう)

小さな登場人物たちが銃火器などの武器、あるいはかぎ爪を振るう。ゲーム画面のようにも見えるが、描かれいてるのはテレビのニュース番組やインターネットで調べた情報に、栗田の空想を加えた世界だ。
全ての戦場に登場する丸い体から手足が生えた兵士は、栗田のX(旧twitter)のユーザー名からとって「メビウス」と呼ばれている。メビウスは人間ではなく、また恐ろしい姿のクリーチャーもゾンビとは少し異なる存在だという。作品に登場するのは敵同士だが、正義と悪という単純な対立ではない。栗田は観測者の中立的な視点の戦場を繰り返し描いているようだ。
小学校2年生の頃からロボットなどを好んで描いていた栗田は、中学に入学すると現在の作風に近い絵を描き始め、本格的な制作を始めたのは高校に入ってからだ。小学生の頃からメビウスや戦場のコンセプトはあったが、2021年のコロナの自粛期間中に思い立って描き始めた。戦場を繰り返し描いていることを自覚したのもその頃だった。それまで自分が描いているものを意識したことはなかったという。
絵を描く時は床の上で座り込み、色鉛筆を使って画面の端から描き始める。構図は描きながら考えているが、構造物には正確さを重視しており、建物を一つ描くのに1-2週間ほどをかけ、武器や装備はメビウスの体に合うようにデザインされている。細かな設定が作品の世界に説得力を与えている。

吉岡沙織(よしおか・さおり)

繰り返される色とりどりの円やアーチは無計画な落書きのようにも見えるが、串刺しの円はお団子、ピンクの円は桜、アーチは眉毛というふうに、それぞれの形に意味がある。
吉岡は2010年に洛西ふれあいの里更生園に入所したことをきっかけに絵を描くようになった。初めはノートサイズの紙に描かれていたが、5年ほど前から大きな画用紙に描き始めた。本人は楽しいから円やアーチを繰り返し描いているという。しかし実家ではほとんど絵を描いていなかったことから、吉岡の父親は離れて暮らす寂しさを紛らわせるために始めたのではないかと考えている。
絵の中の色や形について尋ねると、多様なイメージが反映されていることがわかった。タイトルに出てくる「しまださん」は吉岡の支援担当者の名前で、さまざまな色のアーチは《しまださんのまゆげ》だが、別の絵になるとチョコレートや風車と呼ぶこともある。赤い円は栗饅頭かバナナ、緑の線は葉っぱであると同時に海苔の佃煮でもある。それらはすべて吉岡の好きなものばかりだ。
吉岡は作業用の大きな机いっぱいに紙を広げ、色鉛筆の束から選び出したものをその上に転がす。毎日少しずつ描き足し、1ヶ月ほどで完成する。画面の上の筆跡は衝動的にも見えるが、思いつきではない、吉岡の「好き」の気持ちがたくさん込められている。

料金

無料

主催

art space co-jin きょうと障害者文化芸術推進機構

協力

NPO法人ソーシャルアクション・パートナーシップ みかげ。
社会福祉法人相楽福祉会
社会福祉法人京都総合福祉協会 洛西ふれあいの里授産園
社会福祉法人京都総合福祉協会 洛西ふれあいの里更生園

展示の記録

「Co-jin Collection -コジコレ- No.7 々」展示紹介映像